明野設計室

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里の音

日々のくらし2023.09.26

先日のBlogに岳司が書いた大分・福岡への旅行には、私にもいくつかの他のお楽しみがありました。

そのひとつが小鹿田(おんた)焼きのふるさと。
レンタカーを借り、大分から湯布院を抜けて、山の中のほぼ1本道をひたすら走ること70キロ近く。
途中あきらかに水害の跡とみられる光景にこのまま進んで良いものかと不安になりつつも、
小さな集落と呼べる規模の里(と呼びたくなる)に到着。

まるで映画のシーンのようなバス停がありましたが、運行はたったの一日三本。
バス停の名前は「皿山」。
あとで調べたことですが、「皿山」は陶磁器を生産していた場所を指す九州地方の言葉だそう。

車を停めて町を歩くとどこからともなく、コンッ、コンッという音が聴こえてくる。
あたりを見回してみると、川の流れを利用して作った土を突く唐臼の音でした。

 

小鹿田焼きは、16世紀末に朝鮮人陶工の技術が小石原窯を経て、
この日田市大字鶴河内字皿山に伝えられたものと云われている。
「小鹿田焼き」と呼ぶ為にはいくつかのルールがあるという。

地元の土、水を使う、蹴轆轤(けろくろ)を使う、登り窯で焼く、
伝承技法による装飾付け、作品に窯元の名前を入れない等々・・・
最も驚いたのは、「一子相伝」という考え方。
外からは一切弟子をとらず、自分の子供のうち一人だけに技術を伝えるという方法で
10件(現在は9件)の窯元により300年以上受け継がれてきたということだ。

陶芸の工程の中でスタートとなる唐臼は、川がなくては成り立たない道具。
里には、窯元の数だけの唐臼がある。

窯元の方にお話を聞くと、今年の7月に大雨の災害を受け、やっと修復が落ち着いたところだという。
「300年以上の間、この地域はずっと川の氾濫と戦い続けてきているけれど、
川の流れは生活にとってなくてはならないもの。」と話していたのが印象的だった。
ネガティブなことは一切出てこなかった。

山間の里山に響き渡るコンッ、コンッという音を聴きながら、
300年以上家族だけを通じて受け継がれてきたという事実に高揚感を抑えきれなかった。

小鹿田焼きは、昭和6年に民藝運動の指導者柳宗悦に見いだされ、伝統技法と
質素な作調が評価されました。バーナード・リーチもこの地で作陶されたとのこと。
平成7年には重要無形文化財保持団体に指定されています。

さて、次のBlogでも民藝の大好きな作家さんのことを書こうと思います。

(Misako)

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